鯛焼を美味しいと連呼しすぎるとまだ食べたことのない
初めてのお客さんのハードルを上げてしまって
がっかりさせてしまう気がします。
それくらい鯛焼の味わいというのは繊細だと思っています。
自分の鯛焼をそこそこ美味しいとは思っていますが、
一方で万人が美味しいと感じるものなんてないとも感じています。
だからあまり美味しいと表現せず最近は
「味わいのある」とか「味わい深い」というような表現を好んで使っています。
これはうちのお客さんで 「ここのを食べて子供の頃に食べていた○○(東京の老舗鯛焼店)を思い出した」
というお客さんが多いことから得た表現です。
○○という店は味そのものは餡に塩が効いていて主張が強くうちと全然違います。
では何が共通しているのだろうと考えたときに 味わいの深さなんだと思ったわけです。
私は今年が年男の30代半ばですが、子供の頃には味わいを感じさせるような鯛焼がかろうじて残っていました。
そういった鯛焼を知らない世代の方に小豆餡の鯛焼だけの店は霞んで見えるかもしれません。
だからといって鯛焼というちっぽけな食べ物にあれこれと詰め込みすぎると基本の小豆餡の味わいが濁る…
というのが今の業界の現実だと思っています。
なので当店はお客さんの琴線に触れ昔を思い起こさせるような鯛焼を焼き続けながら、
一方でそういう感覚のわからない若い世代の方もはっとさせるような鯛焼を焼きたいと考えています。
以上のようなことを狭い車内で考え、思いを馳せています。